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学長式辞(11:28)
2010/03/25

 

 皆さん本日は誠におめでとうございます。
 ただいま、各学部を卒業した皆さんには学士、大学院博士前期課程を修了した皆さんには修士、博士後期課程を修了した皆さんには博士の学位がそれぞれ授与されました。また、大学院の課程修了とは別に、本学大学院に論文を提出して博士の学位を授与された方もおられます。私は、皆さん方が長年の努力の結果、こうした学位を取得され、本日、ここに晴れて卒業式・修了式を迎えられました事に対して、心よりお喜び申し上げます。
 また、本日は、長年にわたり皆さんを守り育ててこられました御父母の皆様にも大勢ご列席いただいております。親にとって子の喜び、晴れ姿を見ることが出来ること、これにまさる喜びはございません。御父母の皆様のお喜びもさぞやと推察いたします。今年から、皆様方のご要望にお応えし、式を2部制にして、ご父母の皆様も学生と同じ会場に列席していただき式典を挙行しております。私は神奈川大学の全ての教職員を代表して、御父母の皆様のこれまでの御労苦に感謝申しあげると共に、また心よりお祝い申し上げます。 

 さて、皆さんは、明日から、本学を巣立ち、社会人としての歩みを始めるわけですが、本来ならば希望で胸を膨らませ、夢一杯の気持ちでスタートをするのですが、今年は卒業の喜びを感じながらも、どこか一抹の不安を抱えている状況にあるのではないでしょうか。
 ご承知のように、一昨年秋に始まった世界同時不況の様相は、幸いにその後、新興国を中心に経済も持ち直し、最悪の状況を切り抜けつつありますが、しかし、日本を含めた先進諸国の経済はまだ予断を許さない状況にあります。
 こうした状況を反映して、今年度の就職状況も大変厳しいものになり、この中にはまだ就職が決まらないまま卒業される方もおられます。学長として皆様方の努力を実らせることができなかったことを、申し訳なく思い、心を痛めております。大学としましても、4月以降も皆様方、卒業生のための専用の窓口をもうけ、皆様方の就職活動を強力に支援して行くつもりです。また、就職を決められた方も、これから自分の将来はどのようになって行くのだろうか、自分の会社はどうなるのだろうか、そして日本は、世界はどうなるのだろうか、という不安を抱いている方も多いのではないかと思います。 

 皆様方の現在の不安は、確かに直接的には一昨年のアメリカの金融危機に端を発したものですが、大きくは近代社会、日本で言えば明治維新いらい百数十年の間に造られた様々な仕組みがいま、地球規模で大きく転換を迫られているというところから来ているものです。政治・経済・文化あらゆる側面においてこれまで当たり前だと思われていたこと、常識とされていたことが大きく壊れつつあります。その時代や分野において支配的規範となる物の見方や思想、社会全体の価値観などが劇的に革命的に変化することをパラダイムチェンジともいいますが、今、世界規模で地球規模でこのパラダイムチェンジともいうべきことが起きているのです。例えば近代の資本主義のもとでの大量生産・大量消費社会が善とされてきましたが、今は、地球環境や人間にかかる負荷を極力抑え、持続可能(サステナブル)な社会への転換が求められています。また、これまで人間を優先して、自然を開発・開拓してきましたが、これからは自然と調和した暮らしが求められていきます。今年10月には生物の生息環境の保全などを目的に名古屋で生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)が開催されます。
 このようにこれまで当たり前のことのように行われてきたことが、今、大きく転換を迫られているということです。しかもこの転換は数十年という単位で、それは人類の歴史時間から言えばあっという間ですが、一人の人間の時間軸で言えば、徐々に進行し、変化していくものであります。この間、試行錯誤あり、ゆり戻しがあり、また様々なひずみ・軋轢が生まれてきます。
 例えばもう少し身近な問題に引き付けますと、これまで日本独特の賃金構造や雇用慣行があり、それが高度経済成長期に年功序列型賃金や終身雇用というものに定着し、一旦会社にはいれば、年々賃金があがり、定年退職するまでその会社で働けるというものになりました。これが現在では、賃金に成果主義、能力主義が取り入れられ、あるいは雇用では早期退職の勧奨や、非正規職員の雇用がどんどん取り入れられております。しかし、他方で近年これらの制度の持つひずみが注目され、この見直しが始まっています。またそれだけではなく、非正規雇用という制度そのものを見直そうと言う動きも出ています。
 新聞やテレビでも大きく報じられましたが、広島電鉄株式会社は昨年10月に契約社員を正社員に一本化しました。因みに、この広島電鉄株式会社の社長さん、大田哲也さんは1963年に本学工学部電気工学科を卒業された方です。旧来の制度から新しい制度への移行は、すんなりいくものではなく、試行錯誤、ジグザグを伴いながら進んでいくのです。
 今、皆さん方が漠然として感じている不安感の根源はここにあるのです。いままでの常識や規範に頼る事は出来ない、またいままでの常識や規範に変わる新しい常識・規範も生まれていない。何が正しいのか、何が良いのか、自分で判断しなくてはならないということです。また、その間に様々な矛盾や軋轢が噴出するということです。おそらく、このような状況はあと数十年続くのではないかと考えられますが、その意味で、皆さん方はこれから多くの試練、苦悩を体験することになると思います。 

 そうした皆さんに餞の言葉を贈りたいと思います。

 昨年、本学の学生及び卒業生は輝かしい記録を打ち立てました。神奈川大学体育会山岳部とそのOB組織である学士山岳会がゼブン・サミッツ、すなわちチョモランマ(エベレスト)を初めとする、世界の7大陸の最高峰の山の登頂を8年がかりで成し遂げたことです。これはおそらく単独の大学としては初めてのことではないかといわれている輝かしい業績です。このことは、本学の関係者に大きな勇気と喜びを与えましたが、それは本学の関係者に止まりませんでした。朝比奈誠さんというソングライターが神奈川新聞のこの快挙の報道に感動して『セブンサミッツ(7つの峰を越えて行け)-神奈川大学山岳部の偉業を称えてー』という歌を創ってくれました。この歌は人間がこの世に生を受けてから、直面する7つの試練「悲しいこと、さみしいこと、つらいこと、きついこと、むなしいこと、厳しいこと、悔しいこと」、や7つの苦悩「絶望感、劣等感、孤独感、挫折感、喪失感、焦燥感、無力感」を、私たちの前にたちはだかっている7大陸の最高峰になぞらえ、それに不屈の闘志を燃やし、希望と夢を抱いて、その峰に立ち、その峰を越えて進むことを応援し称える歌です。だから、この歌は直接的には山岳部の偉業を称えるものですが、それを超えて若者達や私たち大人にも元気や勇気を出させる詩となっています。実はこの朝比奈さんは横浜市のある特別支援学校の先生をしておられます。この学校はダウン症や脳性まひ、そして筋萎縮症などの重度の障害をもった、児童・生徒に対して先進的な教育を行っている教育施設です。私は朝比奈さんのことをもっと知りたくて、先日この学校を訪ねてきました。そして、想像していた通り、この詩は特別支援学校に通う児童・生徒へのエール、自分ひとりでは食べることも、立つことも、排せつすることも出来ない児童・生徒、しかし懸命に命を燃やし、成長しようと頑張っている児童・生徒への、そしてそれを深い愛情と献身でサポートしている、父母へのエール、そして先生方へのエールでもあったのです。
 

 この、不確実・不安な時代、困難な時代にも関わらず、いやそういった時代こそ、夢や希望をもって進むことの大事さは、この山岳部、学士山学会のこのセブンサミッツの企画そのものの中に、ございました。両団体のこの企画の直接の契機は長い伝統を持つ山岳部の部員がいなくなるという事態でした。2000年あのミレニアムの年に、現役山岳部員最後の卒業生2名を送りだして一旦休廃部の状況に追い込まれました。そこで学士山岳会・OBを中心に打ち出された計画が「夢抱き、夢育み、夢実現する」というドリーム21計画、すなわちこの単独大学としては初のセブンサミッツ登頂計画という壮大な計画の旗揚げです。この夢を掲げて翌年から新入生の獲得活動がはじまり、まず2名の1年生部員を獲得しました。この内の一人がチョモランマ登頂を果し、セブンサミッツの登頂にも成功した理学部生物科学科卒業の宮守健太さんです。いまでは山岳部は8名もの部員がいます。このように、山岳部の再建とセブンサミッツの成功は、困難にぶちあたった時こそ、大きな夢、希望、目標を抱き、それにうまず、たゆまぬ努力を積み重ねることの大事さをしめしているように思います。 

 そして、また、このことこそ、創立者米田吉盛先生の建学の精神のように思いました。米田先生が本学の前身である横浜学院を創立したのは1928年、翌年に旧制の専門学校横浜専門学校に移行しますが、米田先生はこの時、弱冠29歳の時です。この1928年、29年と言いますと、27年の金融恐慌、29年の世界恐慌と経済的には大変な時でした。しかし、米田先生はこの混乱した時代こそ、若者の教育が何より大事だと教育事業に乗り出したのです。米田先生の情熱は周りを大きく動かし、初代校長に後に検事総長、大審院長、司法大臣など、今で言えば検察庁長官、最高裁判所長官、法務大臣など、司法界の要職を歴任した林三郎先生が就任するなど政界、財界、学界から多くの支援を引き出したのです。まさに29歳の米田先生の夢、希望、目標、それに向けての倦まずたゆまぬ熱意が周りを動かし、わが大学が創立されたのです。

 どうぞ、皆さん、この不確実で不安な時代、困難な時代だからこそ、朝比奈さんの詩にありますように、また本学山岳部・学士山岳会がセブンサミッツ登破したように、そして創立者米田吉盛先生が、わが大学を創立したように、大きな夢、希望、目標をいだいて下さい、そしてそれに向って努力を重ねて下さい。そうすれば、かならず皆さんを助けてくれる人、賛同者、協力者が現れ、必ず夢はかなえられるものです。

 このことを申しあげまして、私の式辞に代えさせていただきます。 

 最後になりましたが、今日ここにご出席の卒業生の皆様一人ひとりのご健勝をまた、御父母の皆様のご多幸を心より祈念いたします。 

  2010年3月25日  
  神奈川大学長 中島三千男

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