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2016年度入学式(第一回目)【学長式辞】
2016/04/03


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神奈川大学に入学された皆さん、また、更なる専門の学問研究を志して神奈川大学大学院に入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。神奈川大学の教職員を代表して、新入生の皆さんに心からお祝いと歓迎の意を表します。

また、ご家族の方々にも、心からお慶び申し上げます。皆さまが大切に育んでこられたお子さんが、本学でその能力をさらに大きく伸ばすことができるよう、私たち教職員も全力を尽くしたいと思います。

式典に先立ち、ご覧になられましたように、本学は、米田吉盛先生が「人は実業家や学者、官僚である前に、まず人間であれ」と説いて以来88年、「質実剛健・積極進取・中正堅実」の建学の精神に基づく「人をつくるにある」とした教育重視の方針を堅持して、今日まで有為な人材を輩出し続けており、卓越した研究と教育を実践する高等教育機関としての誇りと自負を持って、新入生の皆さんを学問へといざなう準備を整えております。
さらに、本学の教育重視の方針は、近年では「約束します、成長力。―成長支援第一主義―」と表現して、大学の新しいコンセプトとして実践しております。
学生の皆さんが、自らの学びと考えのなかで一人ひとりが「成長」を実感し、自立した良識ある市民として自信をもって社会に船出できるように、学生生活のさまざまな場面でも全力で支援をしていこうとするものです。

さて、新入生の皆さんには、改めて大学とはどういうところなのかを考えていただきたいと思います。
学校教育法によりますと、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」とされております。
また、本学でも、学則第1条において、「一般教養並びに専門学術の理論及び応用を教授研究し、識見高邁にして実践力に富む人材を育成し、文化の創造発展及び人類の福祉に貢献すること」を本学の目的と定めています。
このことからも、新入生の皆さんは、本学で一般教養と専門を学修し、知的、道徳的及び応用的能力をしっかりと身につけ、高邁な識見と豊かな実践力ある人間として社会に貢献することが求められております。
新入生の皆さんは、何よりじっくりと学問に取り組まなければなりません。大学では、事前に模範解答の用意されていない問題や、そもそも解がない問題についても学ぶことになるでしょう。高等学校では、身につけるべき知識は学習指導要領であらかじめ定められており、その知識を学び取ることが学習とされてきました。

一方、大学におけるこれからの学びに学習指導要領などは存在しません。研究領域も学びも全てが自由なのです。大学では、学問を極めんとした学者が教壇に立ち、それぞれの学問研究に基づいた教育がなされます。研究課題も、あくまで学者たる教員が決めるものです。
多くの学者が共有する学問の作法では、課題を発見し、その課題の発生に関する仮説を提示し、その仮説を検証し、結論を導くものとされています。何を課題とするか、どのような仮説を提示するかなどは、それぞれの学者の考えに依存します。したがって、さまざまな結論が存在します。
とはいえ、このような科学的思考方法を学ぶことは、新入生の皆さんが身につけるべき、いかなる社会変化にも対応できる能力としての状況把握力と課題解決能力を培うことにつながります。もちろんその解は一つとは限りません。解が存在しない場合もあります。しかし、だからこそじっくり考えることが大事なのです。また、本学は、学則第1条にあるように教養教育に力を入れております。神奈川大学で学んだ学生には、なにより教養ある人間として巣立って欲しいとの思いからです。

ところで、教養ある人間とは、どのような人のことを言うのでしょうか。ものを多く知っている人のことを言うのでしょうか。知識の量が多い人を教養がある、というのでしょうか。そうではありません。もちろんクイズに答えられることなど教養と何の関係もありません。教養教育においても、高校までに身につけた試験対策や成績などとは全く異なった次元の学びが求められることになります。

新入生の皆さんは、自らがどのようにして生きていこうとするのか。例えば、卒業後にどのような職業に就くのかを考えていかなければなりません。教養教育は、このような問題について、じっくり考えて自ら判断するための能力を培うためのものといえるでしょう。
また、進学した学部・大学院で専門科目をしっかり学び、それぞれの専門的知識と能力を身につけて社会に巣立つときに、自らの専門的知識と能力を、どう使うのか、誰のために、何のために使うのかを方向付けるのが、その人の教養のあり方と考えることができます。
例えば、高い専門性を持つ弁護士の資格を得たときに、弁護士としての専門知識と能力を、社会に貢献するために使うのか、そうでないのかは、その人の教養に依存することになります。このようなことから、教養教育はとても大事だと考えています。

さて、ここで、本学の尊敬する先学の言葉をご紹介したいと思います。戦前戦後、日本の論壇で活躍した大熊信行、わが神奈川大学経済学部の誇るべき教授でありますが、その大熊は、権力に迎合するジャーナリストにたいして「雁奴(がんど)たるべし」と述べております。雁とは、池で群れをなす鳥のことです。そして奴(ど)とは、その鳥の中でも脇でひっそりと目立たない鳥のことです。
この言葉は中国の故事からきておりますが、福澤諭吉が『民間雑誌』の中で取り上げた言葉でもあります。福澤の場合、「学者は奴雁たるべし」となっております。奴雁は雁奴と同じことです。少しその部分を読み上げてみます。

「語ニ云ク、学者ハ国ノ奴雁ナリト。奴雁トハ、群雁野ニ在テ餌ヲ啄ムトキ、其内ニ必ズ一羽ハ首ヲ掲ゲテ四方ノ様子ヲ窺ヒ、不意ノ難ニ番ヲスル者アリ、之ヲ奴雁ト云フ。学者モ亦斯クノ如シ。」(『近代日本思想体系10』「学問と知識人」133ページ)。

要するに、雁の中には自らを犠牲にしてもほかと違った行動をとることで、多くの雁を救うことができる雁がいる。それが奴雁だというわけです。ジャーナリストや学者が奴雁たるべしということは、権威や時流に迎合せず、しっかりと未来を見据えた職責を果たしなさい、ということです。20世紀の人類の歴史を振り返るとき、痛切に響く言葉かもしれません。



この言葉を我々研究者のみならず、新入生の皆さんに対して当てはめてみましょう。すると、「学生は雁奴たるべし」の意味は、それをやると出世できるから、または周りのみんながやっているから、ということではなく、未来の社会を見据えて自分の役割と進むべき道をしっかりと考えなさいということになります。まさに「神奈川大学の学生は雁奴たるべし」ですね。

神奈川大学の歴史を紐解けば、この大熊信行をはじめとして、網野善彦、宮田登など数々のすぐれた教員を輩出しております。こうした先学に共通していえることは、まさに雁奴として、真理に対して「質実剛健・積極進取・中正堅実」に研究教育を極めんとした点にあります。

神奈川大学の研究と教育は、時の権威に距離を置き、自由にあるべき姿を建学の精神よろしく独立して考えることを旨としております。この点からも神奈川大学は、日本の誇れる大学の一つであると、はっきりと申し上げられます。
一般に、学問の目的は、「真理の探求と人類の生存条件の辛さを軽くすることにある」とされています。あらゆる学問は、人類の幸福という公共性に開かれた学問として登場しています。
ジョン・ステュアート・ミルも青年時代の勉学は価値がある、すなわち、「人間性を高めるとともに人間社会の新たな問題に対処しうる能力を高める事になる」と、自らの学長就任演説のなかで多くの新入生を前にして述べています。
新入生の皆さんが、この青年時代に真摯に学問に取り組むことは、人間としての成長に大きく寄与するものと信じます。

新世紀に入り、私たち人類はますます多元的な価値観と複雑な社会構造のなかで生きていかねばなりません。一方、人類が抱える新たな貧困問題や紛争などの多くの課題は次々と現出しています。これらの諸問題には、もちろん模範解答は用意されておりません。
新しい時代を創生する人材は、自ら考える力を備えた、教養のある神奈川大学卒業生から生まれるものと信じます。
多元的で混沌とした時代だからこそ、本学での学びのなかで、しっかりと考えて、考え続けて、自らの考える力をじっくりと培ってください。この考える力が、これからの長い人生の糧となります。

神奈川大学は、新入生の皆さんが、新たな友人と出会い、語らい、課外活動等のさまざまな可能性に挑戦するなかで、自ら学び、考え、成長するために必要とされる最高の教育と環境を提供し続けます。
最後になりましたが、新入生の皆さん、伝統ある神奈川大学の学生としての誇りと自信を持って、実りの多い学生生活を過ごされますよう祈念して、式辞といたします。


2016年4月3日
神奈川大学学長 兼子 良夫




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